REPORT

「クラブミュージックからポピュラーミュージック、最上のエンターテインメントへ」

今回のツアーはMISIAがライヴツアーというエンターテインメントの世界に新たな歴史の扉を開いた・・・そう心に強く感じたツアーだった。

もちろん、披露された曲がデビュー曲から最新アルバム「MARS&ROSES」までのベスト盤的な内容だったことや、女性シンガーとしては史上初となる全国5大ドームツアーを完全制覇したことは多くの観客を十分に満足させたといえる。

しかし、このツアーで私が最も注目したい点は、MISIAというアーティストがクラブミュージックをポピュラーミュージックへと昇華させた事にある。なぜなら、私の知る限りクラブミュージックという音楽は、ある種、閉鎖的でアンダーグラウンドなサウンドだった。それは日本の音楽シーンの中では決して誰もが聴いているポピュラーなものではなく、ましてやドームライヴという大メジャーな舞台で体感できるサウンドでは決してなかったのである。

ライヴ前半のHIPHOPメドレーでは、ストリートシーン出身の"U-GE""STEZO"をはじめとするクラブダンサーや、卓越したターンテーブリスト"DJ TA-SHI"のフューチャーが会場を圧倒し、またソウルフルに歌われるR&Bでもオーディエンスを魅了させた。更に、アンコールのHOUSEメドレーではドームという場所を、一瞬にして巨大なクラブフロアのように変化させ、オーディエンスをエキサイトな空間に連れて行ってくれたのだ。しかも、そのHOUSEメドレー7曲は、"JUNIOR VASQUEZ" "HEX HECTOR" "SATOSHI TOMIIE" "MALAWI ROCKS" "GOMI"などの、クラブシーンで活躍する世界的DJ達が手がけたREMIXなのだから、それが更に、私の胸の中を熱く高鳴らせてくれた。そして、それらが実現できたのは、やはりMISIAの歌の力なのだろう。

HIPHOPメドレー、R&B、ゴスペル、HOUSEメドレー、そして王道のバラード。これほどまでの多ジャンルな音楽を、たった一人で構成できるライヴアーティストを私は他に知らない。ステージデザイナーのトム・マクフィリップスによる豪華なステージ・セット、パリ・コレでも注目なファッション・デザイナーのマリヤン・ペヨスキーが手がけるオーガニックかつフューチャリスティックな衣装、またロンドン・フリーダム・クワイヤによるゴスペルのコーラスワークなど、様々なクリエーター・表現者たちが国や言葉を越えて集まっているのも、MISIAのジャンルを超越したヴォーカルにインスパイアされてのこと